鉄筋コンクリート造(RC造)のお話。
平成最後の年、台風や豪雨、そして地震による災害が立て続いていますね。
南海トラフの被害予想が出てから意識される方は多くなりましたが、今年の災害からは、より堅牢な建物を選ぶ方が増えてきた印象です。
そこで今回は、最も強い構造と言われる鉄筋コンクリート造(以下、RC造)についてお伝えいたします。
コンクリートと鉄の相性がめちゃくちゃ良いこと知っていますか?
まさにベストカップルな鉄筋とコンクリート。
互いが互いの弱点を補い合って一つの強い躯体になっているんです。
まず、コンクリートと鉄は熱膨張係数が同じなので、温度変化によって膨らんだり縮んだりするペースが一緒なんです。
膨張係数が違うと、どちらかに負担がかかり、ひび割れたり変形したりという危険があります。
全く違う物質なのに同じ熱膨張係数…
例えるなら、マラソンで「一緒にゴールしようね」と話していた友達が…いや、これは違いますね。
夫婦でランニングを始めたが、走るペースが合わなくて無理をしていた方が膝を痛めたという感じですね。笑
ただ膨張係数は同じであっても、鉄は熱に弱いので、高温にさらされると短時間で変形してしまいます。
それをコンクリートが覆い包んでいることで、熱からも守っているのです。
まだまだ相性が良い理由ありますよ
相性がいいと言われる理由はあと2つあって、1つはコンクリートがアルカリ性だということです。
鉄の敵は言うまでもなく、酸です。
酸化すると錆びてしまいますからね。
コンクリートは酸性ではなく、アルカリ性なので鉄にピッタリとくっついていても、鉄を酸化させることがなく、むしろ防いでくれるんです。
そしてもう1つは、素材として持つ弱点を互いにカバーし合っている点です。
コンクリートは引っ張られる力に弱く、鉄筋は逆に強い。
鉄筋は押される力に弱く、コンクリートは強い。
これを簡単に言うと、以下のように言うことができます。
コンクリートは瓦割り出来るが、鉄筋ではできない。
鉄筋は力を加えると曲げることが出来るが、コンクリートは曲がらない。
コンクリートだけ、あるいは鉄筋だけならば曲げたり割ったり出来ますが、鉄筋コンクリートとなることでお互いの弱点を補い合い、強くなるのです。
どうですか?
鉄筋とコンクリート、まさにベストカップルでしょ。
気になる耐久性は?
日本で最初のRC造マンションからその耐久性を見てみましょう。
一般にRC造の耐用年数が47年といわれています。
ですが、この数字は減価償却が0円となる年数で出されたものであって、実際の居住可能な年数とは異なります。
日本最初のRC造マンションは、長崎県の軍艦島に建設された30号棟だそうです。
簡単に軍艦島についてお話しすると、正式名称は「端島」。
炭坑のために埋め立て拡大を繰り返し、軍艦のような見た目の島となりました。
2015年には世界遺産にも登録されたこの島で、大正5年(1916年)に地下1階、地上7階建で建てられたのが30号棟です。
※建築当初は4階建てで、人口増加に伴い7階建てに増築されたようです。
ちなみに、日本最古のRC造の建物で言えば、1911年に建てられた三井物産横浜ビルですが、居住用ではないので別枠ということでスルーします。
※KN日本大通ビルと名前を変えて現存し、かつ事務所等で使用されている建物です。こちらも強い。強すぎる。
RC造の敵は海と雨だと言われながら、軍艦島の30号棟はいまだ倒れることなく残っています。
小さな人工島である軍艦島は台風などの影響も大きく受けるので、建てられてから今までの約100年間のあいだ、幾度となく大きな波が打ち寄せていたはずです。
小さな島の居住域を守るための防潮壁としての役割も担っていた30号棟をはじめとする軍艦島のマンション群は、通常より過酷な環境下にありながらも現存しているという耐久性の高さ…
さらに、1974年には採炭の終了によって閉山されているので、管理もされていないのに健在。…立ち往生した弁慶並みのタフさですね。
軍艦島には木造や鉄骨造もありましたが、今は完全に朽ちてしまい、建物としての体を成していません。
RC造も間違いなく住める状態ではありませんが、ガレキではなく建物として形を残している点において、耐久性は群を抜いていると言えるのではないでしょうか。
これがもし閉山されずに人の手を入れ続けていたとしたら、まだまだ住むことが出来る建物であった可能性がありますよね。
ただ、RC造に限らず、物件はしっかり管理することでいつまでも綺麗に住み続けることができます。
適切な管理は寿命を延ばす。
最古のRC造マンションについて話したところで、少し木造についても触れておきましょうか。
最古の木造、ご存知ですか。
奈良県にある法隆寺です。
あの聖徳太子が建立したと言われる法隆寺ですが、一度落雷によって燃えて再建されています。
境内に建つ建物の中で最も古いのが五重塔で、再建時期について定まった説はありませんが、材木の樹齢等から約1400年は経っていることは間違いないようです。
これ、日本最古どころか世界最古の木造建築物です。
耐用年数22年といわれている木造ですよ?
法隆寺に入るときに、「怖いな~、崩れないかな~?」と思いながら入ること絶対ないでしょ?笑
きちんとした維持管理がされていれば、普通の木造住宅も何十年でも何百年でも住み続けることが出来るかもしれません。
ましてや、先に伝えたような耐久力を持つRC造であれば尚更です。
RC造って最強なんじゃね?という疑問が頭をもたげてきたところで、弱点もみてみましょう。
コンクリートも劣化する
先に挙げたようにコンクリートの敵は海と雨。
すなわち、水です。
その海や雨による塩害と中性化を説明していきます。
塩害とは、読んでそのまま塩分による被害です。
詳しい反応などは割愛しますが、海が運んできた塩がじわじわ影響を与えて、中の鉄筋を錆びさせたりします。
鉄は錆びると体積が増えるので、コンクリートを押し出してひび割れたり剥がれたりして、より劣化しやすい状態になっていきます。
中性化とは、本来アルカリ性のコンクリートを空気中の二酸化炭素などが溶け込んだ雨水が染み込むうちに、化学反応を起こしてアルカリ性を失わせていく。
その結果、鉄筋を守る効果がなくなり、錆びさせてしまうというものです。
どちらもコンクリートが少しずつ溶かされたり性質を変えられたりして、骨である鉄筋を錆びさせることで強度を失わせるんですね。
外からの影響で変わっていき攻撃的になるコンクリート、体積が増えてコンクリートを拒む鉄筋…
関係が悪化していく夫婦に似ていますね ←
適切な夫婦関係を維持する…いや、鉄筋コンクリートを長く持たせるにはどうすればいいんでしょう。
築古RC造の質は管理の質がそのまま表れる
木造でも鉄骨造でも同じことが言えますが、どれだけ手を入れているかがそのまま耐用年数に出てきます。
特に古い部分を差し替えたり、補強したりということが難しいRC造では、どれだけ状態を保てるかが大事です。
定期的に見回ることで異常を早期発見をして対処したり、全面を塗装して被覆により雨風や衝撃からの保護をしたりして劣化を防ぐ。
そうすることで長く快適に住むことが出来るというのが、RC造の建物の強みではないでしょうか。
鉄筋コンクリートそのものの耐久性は軍艦島が、居住性の良さはあらゆる口コミや経験が証明してくれています。
今回のブログはRC造の耐久性について詳しく書きましたが、居住性については以前書いたブログ(宮本の自由研究【第1弾:建物の構造】)を参照してください。
RC造だけじゃなく、木造や鉄骨造についても触れた内容なので、このブログと合わせて確認してもらえればと思います。
災害続きの今、耐久性で賃貸を選ぶというのもありだと感じたので頑張って調べてみました。
四万十市にもRC造の建物たくさんあるので、見てみてください。
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